資金調達 2020.01.15

エクィティファイナンスの方法1 第三者割当増資とは

第三者割当増資とは、新しい株式を発行して増資を行うもので、その株式を第三者に売ってその売却額を会社の資金とすることで資金調達を行うものです。
しかしながら中小企業の場合は、上場企業と異なり証券会社などを通じて公募で一般投資家に出資を募ることはほとんど不可能です。つまり上場していない中小企業の場合は一般の投資家に出資を募る方法も、さらにいえば一般投資家に対する信用もないのです。そのため、公募ではなく、私募増資という方法で資金調達を行うことになります。これは50人未満の特定の投資家に出資してもらうことで、つまり知り合いや付き合いのある会社の役員などを投資家になってもらい出資を募るということなのです。それでは実際にどのように第三者割当増資を行うのか見ていくことにしましょう。

どのような人に出資してもらうのか?どうやって増資を決定するのか。

第三者割当増資の原則は、既存の株主ではない第三者に追加の出資(増資)をしてもらうことで資金調達をすることです。つまり出資(増資)を依頼する相手として、役員や従業員
さらに取引先(会社、個人)、そして社員持株会がある場合は、そこも対象となります。つまり現在そして将来において会社にとって利害関係がある関係者全てが候補となるのです。これらの利害関係者に対して、増資の募集を行い、申込みしてくれた出資者に対して新株の発行を行い、取締役会の決議を経て増資をすることが第三者割当増資ということになります。

第三者割当増資に関する株価の判断は?

第三者割当増資での新株の発行は、時価発行が原則です。既存株主向けの株主割当増資の場合は、時価よりも安い価格で増資をしたとしても、株主構成比が変わらないため問題ないのですが、第三者割当増資における新株の発行の場合は、時価発行でないと既存株主との間に不公平が生まれてしまうのでこのような原則があるのです。また、時価よりも低い株価で新株を発行した場合は、個人株主の場合は一時所得、そして法人株主の場合は受贈益として税金が発生してしまうという問題もあります。そして万が一時価よりも低い株で新株を発行したしまった場合には、既存の株主が損失を被ってしまうこともあるので、取締役が会社に対して損害賠償責任を負うケースも考えられます。つまり株主が取締役を提訴することも可能で、新株の発行を受ける投資家側が、取締役と共謀して低い価格での新株の発行を受ければそれも提訴される可能性があるのです。

第三者割当増資のメリットとデメリット

第三者割当増資には、次のようなメリットがあります。

・広い範囲での株主の募集が可能である

第三者割当増資は既存の株主に対する増資と比較して、広い範囲で株主を探すことがで
きるメリットあります。利害関係者といっても、将来的な利害関係がある関係者も含まれ
るため、人脈などを活かしつつかなりの数の投資家や企業が対象になるのです。

・取引先からの出資を受けて経営効率の向上につながる

顧客から出資を受ければ、強い営業関係ができるので、好条件・独占での発注などを見込
める場合もあります。また別業種であっても共同での製品・商品の開発や、顧客への共同
アプローチの実施、そして様々な業務提携など関係強化が期待できるのです。また出資し
た会社にしても、出資先が収益を上げることで自社の利益にもつながるのです。。

・役員や従業員が出資をする場合、会社への帰属意識が高まる

役員や従業員が出資者になる場合には、会社へ貢献する意識が以前よりも高まることも期待できます。そして会社の業績を上げることが、自分が保有する株式の配当や株価の向上につながり、結果的に自分の資産形成にもつながるからです。

・自己資本比率が高まる

増資にすること資本金が増えれば、自己資本比率が高まります。これにより対外的な信用
力が強化され銀行融資などの審査も通りやすくなるのです。
一方で第三者割当増資を行うデメリットとしては、既存株主の持ち株比率が下がることで支配権が減少することが考えられます。また既存株主の反対を受ければ第三者割当増資自体がまとまらないケースも考えられます。

会社の資本を増やすために第三者割当増資を行うには、今後の会社の成長性やそれにより株価の上昇や高い配当が見込めることを投資家に正しく説明する必要があります。これが実現できれば株主から新たな出資を受けることができるので、返済の義務がない資金調達が可能となるのです。

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