私募債を発行して取引先や親類、知人などから資金調達を検討できるか
「私募債」というものをご存知でしょうか。私募債とは、上場株式など証券会社を通じて不特定多数の投資家を対象として募集される株式(公募債)とは相対して、少人数の投資家と直接取引する社債のことをいいます。中小企業やベンチャー企業のような場合、この私募債のうち、「少人数私募債」というものを活用することにより、資金調達を行うこともできることもあるのです。「少人数私募債」とは、募集人数が50名以下の少人数に発行される小さな社債で、調達する金額の合計で1億円以下を想定しています。そのため、社債を購入する投資家は、私募債を発行する会社の親類、知人、取引先といった会社と縁故のある人や会社となることが多いので、別名「縁故債」ともいわれています。
さてこの少人数私募債は、次のようなメリットとデメリットがあります。それらがどのようなものかを説明しましょう。
目次
少人数私募債のメリット
①担保・保証人・審査が不要
金融機関から融資を受ける場合は、担保や保証人が必要で、審査もありますが、私募債の場合は、それがありません。
②手続きが簡単
私募債は公募債とは違い、有価証券届出書の提出がないため、手続きが簡単です。そのうえ、公募債に比べて社債の発行にかかるコストもかかりません。
③償還期間・利率が自由に決められる
社債のため、償還期間と利率を決めなければなりませんが、金融機関は関与しないため、会社の事業計画等を考慮したうえで償還期間や利率を自社で自由に決めることができます。
④毎月の返済が不要
金融機関からの融資を受けている場合は、毎月の返済を求められますが、少人数社債の場合、償還期限まで、基本的には年1回、投資家へ利息のみを返還するだけなので、毎月の返済の義務はありません。
少人数私募債のデメリット
①一括償還をしなくてはならない
償還期限が到来すると、投資家へ元本を一括償還しなくてはなりません。事業を運営するために資金は必要ですが、償還期限に一括償還することを想定した事業計画や予算実績管理をする必要があります。
②多額の資金調達をすることが難しい
少人数私募債は金額合計が1億円以下を想定しており、また募集対象が主に縁故者となることから、縁故者が少人数私募債を引き受けてくれなければ、資金を集めることが難しくなります。
少人数私募債のメリットとデメリットは理解いただけましたでしょうか。少人数私募債は、いますぐ必要な運転資金や、キャッシュフローの改善に活用するというよりも、開発資金など、将来に向けた資金を調達するための制度と考えたほうが良いでしょう。
少人数私募債は、縁故債ともいわれているため、会社と投資家の繋がりは強く、経営者個人と会社に信頼があり、また、その会社の現状や事業計画、そして将来像などの情報開示がしっかりできたうえで、予算実績管理をきちんとして、償還期限に一括償還を行うことができることが必要です。
この少人数私募債を活用した資金で事業を大きくすることができれば、親類や知人はもとより、投資してくれた取引先からも金融機関からも信頼が上がることは言うまでもないでしょう。長期的な資金調達方法の一つとしては検討してみてはいかがでしょうか。