エクィティファイナンスの方法4 新株予約権、ストックオプションによる資金調達
新株予約権とは、特定の個人や法人に、あらかじめ決めた価額で自社の新株を引き受ける権利を与えることです。つまり「将来株価が上がった時に、昔の価格で買ってもいい」という権利のことなのです。もし株価が上がっていれば、新株予約権を行使することで株主は大きく儲けられ、株価が下がっているのであればその権利を放棄することもできるのです。つまり株主にとってノーリスクでリターンが見込める出資方法ともいえるのです。
しかし新株予約権を発行しても、すぐに資金化ができるわけではありません。新株予約権はあくまで、新株予約権の価格で新株を引き受けた段階で資金調達ができることになるのです。ですから短期的な資金調達方法にはならないことを認識しておく必要があります。それでは、さっそく新株予約権のメリットについて見ていくことにしましょう。
目次
従業員の帰属意識を高めるストックオプションとしての活用
ストックオプションは、従業員や役員に対して付与される新株予約権です。ストックオプションと新株予約権は別のものと思われる方もいますが、あくまでストックオプションは新株予約権の一種と考えるべきでしょう。ストックオプションを従業員や役員に無償で付与することによって、付与されたときの発行価額よりも株価が上昇していれば、その従業員や役員は給与、役員報酬以外の収入として利益を享受することができるのです。そのために従業員や役員はもっと株価を上げることを目指してモチベーションを高めて、会社の経営や仕事にも積極的に参画してくれるという効果が期待できるのです。
社債と組み合わせて資金調達
前述した通り、新株予約権を発行しただけでは資金調達ができるわけではありません。つまり短期的な資金調達としては不向きで、新株予約権を付与された人がその権利を行使して、株式を購入しない限り資金が入らないのです。一方で車載と組み合わせる、つまり社債を新株予約権付の社債として、実質的に新株予約権部分を無償発行することで、自社の社債の魅力を引き上げることを行いつつ、低金利での資金調達を可能にすることもできるのです。
金融機関に付与して資金調達
将来性が高いベンチャー企業などでは、現在の企業価値で融資をしてもらおうとしても、なかなか思った金額で融資を受けることには限界があります。そこで金融機関に対して新株予約権を発行することを条件に、通常よりも有利な条件での借り入れを交渉することもできるのです。
買収の予防策(ポイズン・ピル)
既存の株主に一定の新株予約権を渡しておくことは、自社が仮に敵対的買収などで経営権が脅かされそうなときに、新株予約権を行使することで、株式の割合を守るという意味で買収予防策になるということも重要なことです。特に資金調達とは繋がりませんが、自社を敵対的買収から守る保険のような役割もあることを覚えておきましょう。
新株予約権のメリット
短期的な資金調達にはつながらないものの新株予約権は、発行する会社にも株主にも次のようなメリットがあります。
1 発行する会社のメリット
・潜在的な株主を増やすことができる
・他の資金調達と組み合わせて資金調達に付加価値をつける
・社員や役員へのストックオプションの付与しモチベーションを高める
2 株主のメリット
・株価が下がった場合は行使しなくて良い
・株価が上昇したときのみ行使をすれば良い
・原則、自由に売買が可能で発行時に「譲渡制限」を盛り込むこともできる
いかがでしたでしょうか。新株予約権は、将来性の見込める中小企業の場合、従業員や役員のモチベーション向上や社債や金融機関への付加価値として有利に資金調達手段にも使えるものなのです。ただし新株予約権は将来的な株価の上昇なしには成立しないので、事業計画と含めた資金調達プランを綿密に立てておく必要があるのです。