コミュニティクレジットとは?果たして画期的な資金調達方法なのか?
コミュニティクレジットとは、「地域の自立的な発展」を目的として、日本政策投資銀行が開発した地域企業などのための新たな資金調達方法なのです。これは「地域社会においてつながりのある企業やお互いに信頼関係にある企業同士が、相互に協力することを目的に信託にとして資金を拠出して、お互いに連携しあい、構成企業がそれぞれの信用よりも高い信用を得ることにより、金融機関からの資金調達を円滑化することで、「地域の資金を地域に環流させる」金融手法といえます。
コミュニティクレジットとは何か
日本には旧来から「頼母子講」や「無尽講」などの地域の企業同士が有する内部情報に基づいた金融手法がありましたが、コミュニティクレジットはこれにプロジェクトファイナンスや証券化などといった新しい金融技術や契約技術、情報開示技術を組み込んだものです。つまりコミュニティ・クレジットには、次の3点が重要な要素となるのです。
(1)金融機関および構成企業相互の信頼関係を強めるための徹底した情報開示
(2)構成企業相互の審査・保証・監視等を通じて、コミュニティ内部で信頼のない企業が排除され、モラルハザードを起こさない仕組み
(3)金融ストラクチャーを活用したリスクコントロールによる信用補完
つまり、日本で従来からあった地域の企業間の信頼関係と新しい金融手法をマッチングした資金調達の方法ということなのです。
コミュニティクレジットの仕組み
コミュニティ・クレジットの仕組みには、信託を使うもの、SPC(特別目的会社)を使うものなど、いくつかの種類が考えられます。国内のコミュニティクレジットの第1号となった「神戸コミュニティ・クレジット」では信託銀行を使って次のようなコミュニティクレジットを成立させました。
(1)相互に信頼関係を有する地域企業が、信託銀行に金銭を信託(出資)する
まず参加企業の間で十分な情報開示が行われ信頼関係が築かれているコミュ
ニティが形成されていることを前提に、銀行と参加企業の基本協定において、全参加企業により表明保証がなされます。 そして信託は銀行からコミュニティクレジットに必要な資金を借り入れるのです
(2)コミュニティクレジットによる貸付(転貸)
参加企業のうち、新規事業等を実施するために資金を必要とするものが信託
に借入の申込をします。借入申込した企業は、新規事業等の内容を他の参加企
業にプレゼンテーションして、参加企業全員が貸付に同意し、借入を行わない
参加企業が貸付の保証(部分保証)をするということで信託は貸付を実行し
ます。
(3)コミュニティクレジットの終了
信託は借入企業から期限に貸付金を回収し。信託が貸付金をすべて回収して
銀行ローンを完済し、コミュニティクレジットの予定期間を満了したら、コミュニティクレジットは終了します。
(4)立場の入れ替わり
コミュニティクレジットでは、参加企業間でその時々により借主になったり貸主になったりします。貸主となった参加者は、その期間中は借主となることはできませんが、返済が完了した後は借入企業となる資格があります。したがって、事業資金が必要ないときは貸主になり、資金が必要になったときに借主となるといったようにその時々で立場が入れ替わることもできるのです。
コミュニティクレジットには参加企業間の強い信頼関係が必要
コミュニティクレジットは参加企業間の強い信頼関係が前提になります。ですからこのような信頼関係が築ける企業同士であれば困った時の資金調達方法ともなりうるわけです。例えば地域内での強い助け合いの絆で相互扶助の意識が強い企業同士であればこのようなコミュニティクレジットの組織化も有効ではないでしょうか
日本で古くからある「頼母子講」や「無尽講」の仕組みを生かしたコミュニティクレジットは地域の産業振興や同業者同士の相互発展を目指す意味では今後注目されていくことでしょう。